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Episode #017

新緑の葉に初夏を感じさせる暖かな陽光が射し、メギストリスの石畳に葉陰が柔らかなまだら模様を写している。

夏本番を思わせる季節外れの酷暑が過ぎ、花冷えと言うにはこれまた著しく時期が遅れた冷え込みが今は町中を覆っている。

 

その日、俺は同じ隊の術者アルビレオと共にギルザットへと討伐に赴き、その成果の報告のために不夜城メギストリスを訪れていた。

早朝からの討伐行であったため、まだ太陽は蒼天高くにとどまっている。時刻は2時をすぎたところか。日没も随分遅くなった今では、まだもう一仕事も二仕事もできそうなほどだ。

 

冒険者ギルドへ赴き、簡単な手続きを行って討伐の成果を換金する。

ギルザット草原を跋扈するフォレスドンは凶暴なモンスターであることに間違いはないが、そのことがかえって俺たち冒険者にとっては貴重な収入源にもなっている。人々の不幸が飯の種だなどと不謹慎極まりない。魔物の脅威に脅える市井の人々からすれば、冒険者がやくざ者との扱いを受けることがあるのもやむを得ないとは思う。

 

とはいえ俺たちは冒険者だ。

討伐による報酬で少しは懐もあたたまったところで、俺はアルビレオを伴って隊の詰所を訪れた。

シャノアール、トロ、エレナ、リリア…、なじみの面々がすでにそこかしこで額をつき合せるようにして何やら話し込んでいた。笑声がはじけ、一方では真面目に戦術論を戦わせる声が耳朶をたたく。

普段と何一つ変わらない空気がそこにあった。

 

『たしか今日ってぽるかの誕生日じゃなかったっけ?』

 

『えっ?そうなん??』

 

『じ…実は今日、私ハタチになりました!』

 

『・・・・・』

 

「あ~、2回目のハタチね?なるほどなるほど」

 

『なんだとっ!』

 

『もしかしてタ~さんも誕生日だったりするんじゃない?』

 

『えっ?マジ?』

 

『お~!おめでとう!!』

 

突如として沸き起こった誕生のお祝いに、詰所はハッピーバースデーの大合唱だ。

基本的にお祭りが好きなんだよね、皆。気のイイやつらばかりなので、仲間の誕生日なんかは恰好のネタになる。

 

当然の流れのように祝宴の内容に話題は集中していった。現時点最高ランクのレーティングが設定されている三悪魔の討伐に行くのだとか、いやいやバラモス10連戦だとか不穏な声も聞こえてくる。スリリングな危険に身を投じることが喜びになるだなんて人としてネジの数本が飛んでるとしか思えない。

そんな矢先のことだ。

 

『…アルビレオさん、あんたに緊急依頼書が来てるよ』

 

守衛の一人がアルビレオの顔をみとめてそう声をかけた。

緊急依頼書。冒険者ギルドから無作為に送り付けられる時限付の討伐の依頼書で、えてしてその報酬は高い。そして報酬の高さはすなわち討伐対象となる魔物の凶悪さに比例していた。

 

「お?緊急依頼書なんてラッキーやん。何を仕留めてこいって言うてる?」

 

喧騒にまぎれるように俺は傍らの後輩の様子を伺った。依頼書の封を破り、中身を確認したアルビレオが少しこわばった笑顔を返す。

 

「…キラーマジンガ…です」

 

ぶぼっ!と俺は思わず口に含んだ麦酒にむせかえった。

現在Sランクにレーティングされるキラーマジンガは、数ある討伐モンスターの中でも群を抜いて凶暴な魔物の一つだ。生半可な練度で挑んで良い相手ではない。一歩間違えば死に直結するほどの強敵だ。

 

『ん?どした…?』

 

シャノアールが俺たちの様子とみとめて声をかける。事態を手短に説明すると、金髪の女戦士は口許に薄く笑みを浮かべた。

 

『いけるでしょ。アル君僧で』

 

ふむ…。

アルビレオもここ数か月で幾度も激戦を潜り抜けてきている。僧としての能力はまだ高いとは言えないが、それでも中庸の冒険者の域には達しているか。

 

『よし。ぽるたんとタ~サンのお祝いに三悪魔を狩りに行こう』

 

キラーマジンガ討伐の算段を立てている俺の傍らで、エレナが快活な声を飛ばした。

仲間から誕生日のお祝いの言葉を受けていた二人は、一方は飄々とした笑みをたたえ、もう一方は張り切って「はいっ!」と声を上げた。

 

『デボさん、介添えをお願いできるかな?』

 

軍神からのお誘いに胸が躍る。

一方でアルビレオの緊急依頼書の件も気がかりだ。緊急依頼書は時限が定められている。そしてその刻限はこうしている間にも刻一刻と迫っているのだ。

 

『んじゃこうしよう。アルくんの依頼書はこっちでサポートする。デボさんはエレナさん、ぽるたん、タ~さんで三魔喰ってきなよ』

 

三魔喰うって、七輪で魚を焼くのとは勝手が違うんだぞ、と内心思わないではなかったが、シャノアールの提案は正直嬉しかった。

ぽるか、タ~タンには常日頃からお世話になっている。重ねて誘ってくれたのは軍神と敬愛するエレナだ。この祝いの討伐行を逃すと大きな悔いが残ることは確実だった。

 

『ユエちゃん、リリ。魔、いけるね』

 

『無論承知の助』

 

『おっけ。サクッと燃やしてあげましょう』

 

軽やかに応じるユエとリリア。難関を前にしても普段と何ら変わらぬ仲間たちの言葉が心強い。

三魔討伐に関しては、タ~タンもぽるかも戦力的には申し分がない。重ねてエレナのサポートがあれば、いくら俺がへぼだとしてもそうは遅れはとらないだろう。

一方のキラーマジンガ討伐は、部隊の要と言える僧侶に未熟なアルビレオが配されたことに不安は残るが、脇を固めるのは蛍雪でも屈指の実力派揃いだ。個々の戦力はもとより、敵の特性や戦術論その他に至るまで一分の隙もない。

 

「ユエちゃん、もしアクセルギアでも獲れることがあったら、上手い酒でもごちそうするよ」

 

『ほほう!んじゃウマいマーボー食わせてくれ』

 

「ぶははっ!了解。今度オルフェアにある料理ギルド推奨の銘店の麻婆豆腐をご馳走しよう」

 

『うしっ。マイ火力できっちり黒焦げに焼き尽くしてあげよう』

 

にやりと微笑むユエとハイタッチを交わす。まるでそれを合図にするかのように、俺たちはそれぞれの討伐行に向けて動き出した。

 

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『いた…ヒドラに…バラモスブロス、ゾンビ…三魔が雁首揃えてご丁寧に…』

 

アラハギーロからはるかに西方。流砂の砂漠をこえた先の朽ち果てた古代遺跡の一角で、俺たちはようやく目的とした獲物を発見した。

キングヒドラ、バラモスゾンビ、バラモスブロスが紅蓮の瞳を輝かせながら、獰猛な殺意と瘴気をまとって唸っている。足元には魔物に捕食されたのか獣の残骸が散らばっている。羽毛とわずかな肉片とそこかしこに飛び散る血痕がいよいよ背筋を冷たくした。

 

『まず開戦は私が当たるね。皆はだいたいこの辺で。慌てなくても敵の方から寄ってきてくれるよ』

 

エレナが砂上に簡単な略図を書いて戦術を説明する。

 

『攻撃は複数で受けて分散するのね』

 

「ヒドラはダークだね。他もダークでいいんだっけ?」

 

『ゾンビはストームがいいかな。ブロスはダーク』

 

『ヒドラ落ちたら蘇生いけるかも』

 

『いや…ラス1になるまでは葉っぱで行こう』

 

『了解♪』

 

言葉短くいくつかのやり取りがなされていく。エレナの脳裏にはすでに駆逐までのプロセスが明確に描かれているのだろう。

短い紫檀の髪が熱砂の風に揺れ、砂が入るのを避けるために薄く眼を細めている。太陽が西の地平に沈もうと赤々と燃え、空は暁紅と紫紺とが覇権を争っている。おぼろに輝く月がさえぎる物のない空に怪しい光を灯していた。

 

(…俺のサポートで行くなんて、まったく皆、モノ好きにもほどがあるわな)

 

慣れない魔戦士としての立ち回りに不安が募る。その不安を知ってか知らずかぽるかは陽気な笑みを浮かべ、タ~タンは俺の傍らで手を合わせて合掌した。意味が分からない。

 

『行きます』

 

エレナのいつもと変わらぬ涼やかな声を合図に、俺たちは戦場へと踊りだした。

滑りやすい白砂の上、重さを感じさせない軽やかさで長身の女戦士が疾走を開始する。それとはやや異なる方向、少し斜方で俺を含む3人が一列に並び戦線を整えた。

 

キングヒドラの紅蓮の双眸がエレナの姿を見止めるのと、彼女の両爪での一閃が深々とその身を切り裂くのとがほとんど同時だった。大気を切り裂く鋭い一撃が魔物の甲殻を貫いて体液を飛散させる。エレナは片足でヒドラの右肩当たりを蹴り上げるようにして宙を舞い、軽やかに宙で一回転して俺たちのそばに音も立てずに着地した。

 

彼女を追うように魔獣の狂気を含んだ怒りの咆哮が古代遺跡を震撼させる。

エレナが事前に説明した通り、キングヒドラは迷わず俺たちのいる場所に突撃してきた。俺とタ~タンの視線が交錯し、軽くうなずきあった後、タ~タンの両爪が深々と肉を抉る。その爪先が漆黒の魔力に揺らめいていた。

 

ヒドラの痛撃は俺たちの体力の半ばを一瞬にして奪い取ったが、ほんの半瞬の間でぽるかの治癒の呪法が速やかに傷を癒していく。

ぽるかは「ごばくぃーん」だの「うっかり女子」だのと称されることが多く、それは文字通り事実に他ならないが、こと戦闘に関しては文句なしにすぐれた熟練の技量の持ち主だった。間髪いれぬ治癒の技に前衛は常に攻撃にのみ集中できる。

 

「ま、誤爆はぽるちゃんの魅力だけどね!」

 

『!…意味がワカラナイ!』

 

極限の緊張下で、緊張感のないやりとりを交わす。そのことに軽く笑みを浮かべながら、エレナがヒドラに追撃を加え、ぽるかに向けられた怒りの矛先を巧みに反らす。

そこに生まれたわずかな隙に、俺が渾身の耐性強制解除の呪法を突き込む。間髪入れずにタ~タンの渾身のライガークラッシュがキングヒドラに叩き込まれた。肉を断ち骨を砕く激しい裂断音を魔獣の咆哮が覆い隠す。魔物の傷口からあふれ出る暗紫色の体液に半身を染めながら、タ~タンの右腕が肘のあたりまで外皮を貫いて打ち込まれている。おそらくは心臓を貫いたのだろう。

ヒドラの3つの首が苦悶にのたうち、その口角から血泡があふれだしていた。

 

ヒドラの双眸が焦点を失い、四肢から力が抜け落ちていくのとバラモスゾンビが我々の元に襲いかかってくるのがほとんど同時だった。

俺は即座に呪法の詠唱を終える。燐光が仲間たちの武器を纏い、パリパリと嵐神の守護が刃を覆う。刹那、タ~タンが崩れ落ちるヒドラから右腕を引き抜くと、血に汚れ凄惨な様子のまま間髪入れずにバラモスゾンビに向かって一喝を放つ。

 

『内臓がないぞうっ!』

 

「!!!」

 

空気か凍り付く。

激闘の戦場に魔術師の持つ氷結呪文マヒャドデスをしのぐほどの冷気が漂う。よもやタ~タンの言動でバラモスゾンビが笑撃を受けたとは考えられないが、流砂に足をとられたのか、瞬間魔物の動きが止まり、奇妙な空隙が生じた。

 

『ナイスっ!』

 

エレナの旋回する棍が空を切る。両爪から魔力を帯びた長棍に換装を終え、地に伏したバラモスゾンビの頭蓋を唐竹割の要領で叩き落す。

その後方に迫るは紫炎の魔王バラモスブロス。

 

『ゾンビを狩る!でもブロスのネクロには常に気を払って。視界に入れておく感じでよろしく!』

 

エレナの渾身の一撃は、相当なダメージを与えたとは考えられるが、それでもまだバラモスゾンビに致命の一撃を与えるには及ばない。

より一層の怒りを両目にたたえ、バラモスゾンビの瘴気が咆哮と共に押し寄せる。討伐対象のうち、残る悪魔はあと2つ。落日の陽光のもと、アラハギーロの古代遺跡に激しく剣環が響き渡った。

 

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時を同じくして、アルビレオの緊急討伐書の一行も眼下に敵影を確認していた。

ドルワームの西、ゴブル砂漠を超え、ボロヌスの穴と称される洞窟の一角に古代魔装機が澱んだ瘴気を纏って徘徊している。溶岩流と硫黄の匂いがこもる洞窟内においそれと一般の人間は迷い込まないが、放置しておけばいつ何時悲劇が産み落とされるかもしれない。

 

『1機か…ま、リペアで2機になるもんと考えておいた方が無難かね』

 

『私とユエちゃんで陣を張って陽動するよ。ビオレ君は回復専念ね』

 

『ふふ…俺の火力で燃え散らかしちゃる』

 

シャノアール、リリア、ユエなどはすでに何度もキラーマジンガの駆逐を遂げていることもあり、その表情には余裕が浮かんでいる。

一方のアルビレオにとっては、Sクラスの魔物と相対したこと自体が数えるほどしかない。錫杖を握る手に汗が浮かび、喉の奥が焼け付くように乾いている。生唾を飲むことさえももどかしい。

 

『グランドは喰らったらもたない。幸いステップバックでかわせるとは思う。矢は喰らうもんと思っておくから回復頼むよ』

 

シャノアールの双眸がまっすぐにアルビレオに向けられていた。口許のやわらかな微笑に仲間に対する大きな信頼が見て取れる。

命を預ける、と言われて燃えない奴はいない。少なくともこの瞬間、アルビレオは身体の内側にふつふつと沸いてくる勇気の衝動を感じていた。

 

「やってみます!よろしくお願いします」

 

『OK』

 

切りそろえた紫銀色の単発を軽やかに揺らしてユエがにやりと目を細める。リリアが軽く首を回して伸びをとり、最後にシャノアールがキラーマジンガが潜む洞窟の影を見据えながら、挑発的な視線を浮かべてパキパキっと指を鳴らした。

 

『やっちまいなぁぁぁぁ!』

 

ハンマーと盾を携えてシャノアールが物陰から躍り出る。それに数歩遅れて追従しつつ、二人の魔導士が低い呪文の詠唱を終える。

魔力覚醒からの爆炎一閃。轟音と共に高熱が魔装機の装甲を焼き、周囲の壁面を瞬間暁に染めた。

 

呪法で自重を増したシャノアールはすでに接敵を終え、大型の盾を敵の装甲の一部に食い込ませて機動力をそいでいる。拮抗している間、自身の攻撃も半ば封じられることになるが、そのおかげで兇刃の脅威を感じることなく2名の魔術師が存分に魔力を振るうことができる。

 

キラーマジンガの両眼から弾丸がぐるりと円を描くように連続して放たれる。

接敵するシャノアールはこれをかわすこともできたであろうに、敢えてその身で痛撃を受ける。肩口から鮮血が散り、もう一発は装甲をかすめて硬質な金属音を放ってはねていった。

被弾する直前に詠唱を終えたアルビレオの治癒の呪文が、傷ついたシャノアールの肩に燐光を灯す。速やかに回復していく様子をみとめて、金髪の女戦士はにやりと口角を上げて笑った。

 

『ビオレ君、いい仕事!』

 

後方ではリリアが大地に描いた魔法陣の上で、ユエが両腕を振り下ろして特大の火球をキラーマジンガに向かって放っている。燃えたぎる隕石のような魔力の塊がシャノアールの頭上をかすめて魔装機を直撃した。火球が敵をとらえる瞬間には既にユエはその場にいない。代わって魔法陣の中央では両手で杖を構えたリリアがすばやく韻律を刻んでいる。先ほどユエが放ったのと同じメラガイアーの爆炎が瞬きほどの間をおいて、再びキラーマジンガに向かって降り注いでいく。

 

駆動系に致命の衝撃を受けて、キラーマジンガがエラー音を生じて活動を鈍らせていく。

けたたましい騒音を発して大地に転がった魔装機を前にして、一瞬アルビレオの緊張がゆるむ。が、ほっと一息する暇もなく、マジンガの両眼が激しく明滅を繰り返し、再起動を促す電子音がその体内から響いてきた。

 

突如として半身を大きく旋回させ、自身をさながら巨大なコマのようにしてキラーマジンガが活動を再開させる。

凶悪な一撃、グランドインパクトは洞窟内の石畳を弾き飛ばし、頭上からパラパラと小石が降り注ぐほどの衝撃を周囲にまき散らしたが、その瞬間には既に魔装機の傍らから全員が退いて事なきをえていた。

 

『ほい、リペアしくさった。もうひと押しといきますか』

 

シャノアールが右肩にハンマーを担ぎ上げ、石畳を蹴ってキラーマジンガに向かって疾走を開始する。

 

『アクセをよこせー!』

 

挑発的な笑みを浮かべてユエが劫火で魔装機を焼く。リリアが疾走し、シャノアールが体を張って敵の行動を阻む。

アルビレオは緊張で生唾を飲み込んだ。乾いた喉が音を立てる。

熱砂の砂漠が落陽の色に染まっていく。地平に沈む太陽を背に、熟練の冒険者たちによる古の魔装機駆逐行はいよいよ終盤を迎えていた。

自身に命の綱を預けてくれる仲間たちの期待に応えたい。錫杖を握りなおし、アルビレオの口から低く快癒の詠唱がつむぎだされていた。

 

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中天に銀色に冴えた真円の月が浮かんでいる。

不夜城メギストリスはとっぷりと夜が更けた今もその喧騒が収まる様子さえない。行き交う人々の賑わいが路傍に満ち、酒精と女たちの嬌声が夜の街を華やかに彩っていた。

 

冒険者ギルドの一角にある隊の詰所もいつも以上に歓声に沸いている。

 

『この前ぽるちゃんってばオーガキングの討伐と間違えて、山ほどオークキングを倒してたんだって。さすがだよね!』

 

『!!?なぜ知ってる!』

 

『内緒っていったのに~』

 

『犯人はお前か!』

 

『やっぱ焼酎はロックに限るね~』

 

『私は下戸だから酒の味がイマイチわからない』

 

『うん。やっぱりマーボーは旨い』

 

『マーボーか。豆腐は認めるが茄子は私は認めない』

 

『!?わかってない!わかってないぞ、きみぃ』

 

『ねね、マーボー。ちょっとそのボトルとってよ』

 

『マーボーって呼ぶなぁああああ!』

 

蛍雪之功の詰所はいつも活気に満ち満ちている。伝説の三悪魔と称されるほどの難敵を倒した一行も、太古の魔装機の生き残りを駆逐した面々も再び一堂に会して酒杯を交し合っていた。

その日の討伐行は予想外の報酬を隊員にもたらしてくれた。冒険の身を守る装具となるに十分量の魔晶石を手に入れ、皆の笑声が一層高まる。

 

アストルティアの長く激しい冒険の中、束の間の休息の夜がいつもと同じように仲間たちの歓声とともにふけていった。

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